Dyckia入門_学名・品種名について

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ディッキア入門編、今回こそは育て方を!と思っていましたが、、書いたものを読み返すほど「これでいいのか??ちゃんと伝わるか?」という言葉の沼にハマってきました。だってそれぞれの環境で育て方は千差万別だし......変な先入観を植え付けてしまったり、誤った解釈されてもなぁ....と言葉を慎重に選ぶところで非常に悩んでおります。ですので、今回は品種名・学名について書かせていただきます。「学名について」というより、鉢に刺さっている札(ラベル)の書き方や意味って感じかもしれません。育て方の前に知ってて損はないでしょ!(知らんけど)
そんな事わざわざ言われんでも知っとるわ!という方はサクッとスルーでお願いします。


学名
植物に限らず自然界に生息している動物 藻類 菌類などには、その個体がどこに帰属されるどの種のか分類して同定するための世界共通の名称があり、それを学名といいます。



余談_自分はファッションの仕事をしていて、担当している仕事の一つに輸出業務があり、輸出用のINVOICEの作成などもしています。例えば、ラムレザーやムートンなど羊の革を使用した商品を輸出する際、今まではMouton /  Ovis aries (毛皮/ヒツジ属) とだけ書いてました。だいたい家畜として飼われているヒツジはOvis ariesのなにかでその中にワシントン条約に触れる種がいないかったから問題にならず通関していたのでしょう。しかし、ちょうど去年の今頃、ワシントン条約(CITES)の附属書が改訂された際に「附属書Ⅰ」に記載されていた絶滅の恐れがある野生の羊の亜種の属名Ovis ariesに変更されたんですね。そのため、Ovis aries だけではCITESに引っかかってしまう種も含まれるという事で、種小名まで調べて更に「野生ではなく飼育された羊です」といちいち記載しなければいけなくなりました。みなさん今着ている服の品質表示を見て下さい。冬物の洋服ってほとんどにWOOL入っていません?毛皮ならまだしも、ウールの糸を使ったものまで記載が必要になったんですよ。。書類を作成する立場からすると、野生の羊を捕まえての毛を刈って紡績して糸作って生地にするって…誰がやるんだよ?!って感じですが、同属に絶滅危惧種がいるとなるときっちり書かなあかん訳です。まあ元々ちゃんと書かなきゃいけなかったのかもしれませんが(汗) 学名は、学術的な論文などだけでなくこのような貿易でも必要ということですね。メンドクサイけど。。



学名表記


_ 属名 種小名 の順に列記する事がマストとなります。
これを二名法といい分類学の父と呼ばれるリンネによって体系化されたとあります。

_属名の頭文字は大文字で、全て斜体で表記し、種小名は全て小文字の斜体で表記します。

*追記_: 必ずしも斜体でなくても良いみたいです。学名に下線引いたり太文字にしたり前後の文章と学名が区別できればOKとの情報を頂きました。

なんのこっちゃ・・?と思うかもしれませんが、下の例をご覧ください。
ディッキアや人気の植物でよく目にするものだけ簡単にまとめておきます。

まず DyckiaはBlomeliaceae (ブロメリア科)Pitcairnioideae(ピトカイルニア亜科)ですが、以下に続く属名は他と被らないのでここは省略して大丈夫です。属名の Dyckia から始めてOK。頭文字は大文字で、斜体で表記します( Dyc. またはD.と省略する事も可 )。

その次に半角スペースを空けて 種小名 を列記するのですが、

原種=Speciesは先に述べたようにラテン語で、全て小文字で表記されます。

園芸品種=Cultivarsは  '     ' で囲み、頭文字は大文字表記になります。

園芸品種は英語が一般的ですが、既存品種と被らなければ作出者が自由に申請できるのでDyckia  'Yakuza' や Dyckia  'Wasabi' なんていうのも存在します。

ディッキアの園芸品種登録は国際ブロメリア協会(BSI)が行っていますので、そこに登録されない限り勝手に名付けても「通称」止まりです。実際、BSI登録はされていませんがナーセリーや著名人が命名して、その名で世に広まっているクローンも多数います。

Dyckiaを中心に学名の例を下記にまとめてみました。



1_原種_見た目に因んだ名前

Dyckia delicata 
原種である ディッキア デリカータは 種小名は 斜体・全て小文字で表記されます。
delicata=delicatus=繊細な 優美な
学名は 属名=名詞 種小名=形容語(詞)となることがほとんどで前にくる名詞を修飾しています。「優美なディッキア」その通りですね。



Dyckia excelsa
Dyckiaの中で最大種と言われる
Dyckia excelsa = excelsus = 高い という意味です。写真はタイのQさんの家に地植えされたエクセルサで最大幅1.5mくらいで花茎が3m以上あってマジでエクセルサスでした。Doryanthes excelsa(ガイミアリリー)も花茎を高く伸ばし大きな花を咲かせるので「高い」という形容詞は花茎を指すことが多いのかもしれません。


delicataexcelsaも語尾がusとならないのはラテン語は名詞に男性 女性 中性と性別があり、前に来る名詞の性別によって形容詞も変化(変格)するのでーaと語尾が変わるようです。-usからーaに変化するってことはディッキアは女性名詞なのかな?中性名詞以外はーaになるのかな。


きちんと表記されていれば斜体か正体かで、原種 or 交配種の判断材料となり得ますが、、手書きのラベルだとだいたい斜体っぽくなってしまうし、残念ながらそこまで正確に手書きする人はいなそうですね。。まあ、感覚的にラテン語か英語かは判断つきますよね。難しそう・なんか堅苦しい感じの名前は大体ラテン語ですw 馴染みがないと呪文のように聞こえますが、ラテン語の形容詞を覚えると種小名でなんとなくの特徴や原産地が分かったりして楽しいです。全て網羅するには膨大なボキャブラリーが必要になりますので、自分が持っている種だけでも調べてみると忘れないと思いますよ!他属で同じ種小名に出会った時「なるほどね〜」って ニヤッとできますw

例_ほんの一部ですが
alba = albus = 白色の
brevifolia = brevifolius = 短い葉の
alternans = 互生の (ペラルゴニウムに有名なのがいますよね)
horrida = horridus = 強い棘を持つ(アガベやエンセの大人気種)



2_原種_何かっぽいに因んだ名前

Dyckia hohenbergioides  
oides = 〜のような  という意味なので、直訳すると「ホヘンベルギアのようなディッキア」って事になりますね。草姿はまるで違うので、この場合花序が似ているという事でしょう。

他には Dyckia enchorilioides (エンコリリウムのような)もいますね。



3_原種_地名に因んだ名前

〜ensis(前が女性名詞 男性名詞の場合) 
〜ense(前が中性名詞の場合) 

Dyckia paraensis(ブラジルパラ州原産の)←アマゾンに生息するディッキア!!
Dyckia domfelicianensis (ブラジル南部ドンフェリシアノ原産の)
Dyckia formosensis (ブラジルゴイアス州ファルモザ原産の)



4_原種_他属で同名もあり

Dyckia marnier-lapostollei
ディッキアの代名詞的存在マルラポさん。
種小名は属が異なれば同一の名が認められるため、属名との列記が必須となる良い例です。実物が目の前にあれば一目瞭然ですが、リストにしたり、輸入出する際はHechtia marnier-lapostollei や Tillandsia marnier-lapostollei など他属同名種もいるから、どれのことか分からなくなっちゃいますよね?



5_原種_献名
上の4と同じ種になっちゃいますが、ブロメリアでよく見かけるmarnier-lapostollei という名前はプラントハンターのパトロンでブロメリアコレクターでもあったJulien Marnier-Lapostolle氏の名に因んで付けられているそうです。このように研究者が支援者へ敬意を表してその名を命名したり、発見者など特定の人物の名前を織り込むことはよくあります(それを献名と言うそうです)

日本ブロメリア界の第一人者、日本ブロメリア協会 滝沢会長が発見したチランジアの新種は 
Tillandsia takizawae と名付けられています。
Dyckia estevesii も南米植物の調査に貢献した Eddie Estevesさんの名を冠した献名です。もしこの名前でなければ、互生ディッキアの代表はDyckia alternaになっていたことでしょう。

ちなみに語尾が〜ii 〜ae 〜ana は人名に因んでいる可能性が高いです。
私の大好きな D. goehringii も人名 Goehring さん から、D. hebdingii も Hebdingさんからきているようです。他にも人名由来の種名は沢山あります。
Dyckia braunii (pierre j braun博士より)
Dyckia jonesiana(jones Calda博士より)



6_園芸品種
人気の交配種 ディッキア ヘブンアンドヘルは
Dyckia 'Heaven and Hell' (頭文字=大文字・ローマン体)となります。基本英語は全部交配種と思って大丈夫です。



7_園芸品種 名無しのハイブリッド
ディッキアではこれが一番良く見かける札ではないでしょうか?名前のない(登録されていない)新しい交配種には、◯◯と△△が親の交配種という表記で両親の名前の間に x を入れて表記します。
Dyckia. 'Arizona' x 'Brittle Star'
前に来るのがSeed Parent 種子親  後が Pollen Parent 花粉親の順となります。

名無しハイブリッド同士の交配の場合はさらに( )で囲みます。
 例) ('Arizona' x 'Brittle Star') X ( goehringii estevesii)


余談_
Dyckiaの交配は非常に簡単なので、各農園または個人でも盛んに行われており、どんどん進化した園芸交配種が生まれてきています。常夏のタイはディッキアの栽培に適した気候なので、多くのブリーダーや農園が原産地であるブラジルやアメリカの農園から取り寄せた種・輸入株を繁殖し、交配・実生したハイブリッドを生み出しています。そしてそれらは世界中に流通しています。'Bangkok Star' ←(US産 Zinfandel F2 との情報もあり) 'North Star'  'Tsunami'  などBSIに登録はされていませんが、特徴的で優秀なタイ産ハイブリッドも多くあるなか、特に特徴も無い交配種をタイから輸入した日本の農園・個人の転売屋が勝手に命名して売り出すというかなり乱暴な事も多く起こっている現状です。いかにもありそうな名前が付けられていたり、きちんと調べず既に登録されている品種と同じ名を付けていたり(似てるものに悪意を持って同じ名前を付けてる人もいる)。。。これを大手の農園が先陣を切ってやっているので、もうカオスとしか言えません。サボテンなどの和名も元を辿れば仕入れた業者が他の業者と差別化を図るため勝手に付けたところから始まっているらしいので、歴史のある農園ほど混乱を招くだけの行為だという認識がないのでしょうか?

 オリジナル(その園芸品種の登録された株)を見たいときはBromeriad Societies Internationalのwebサイトを参考にすると良いでしょう。個人売買やヤフオクなどで「オリジナル」「オリジナル クローン」など付けているものが多数ありますが、由緒正しい本当のオリジナルクローンは簡単に手に入れる事は出来ないものが多いです。

BSI_BCR_Dyckia
http://registry.bsi.org/?




省略と符号
ついでなので符号についても、よく見かけるものをざっくり挙げておきます。

sp. = species
学名が付いていない未記載種。○○属と推定される不明種といった感じです。新種のため学名がない場合は種名の代わりにsp.と書きます。sp.の後に( )を付けその個体に見られる特徴、原産地、発見者名などのデータ等を付記し他の未記載種と区別することもあります。当然ですが、親が分からなくなってしまった交配種に sp.とは付けません。たまに品種が分からないものに何でもsp.とつければ良いと思ってる人がいますが、親の分からない交配種は Dyckia hybrid(交配種)と書くのが正しいです。

例_Hechtia sp. nova oaxaca = ヘクティアの未記載種 オアハカ地方で採取された新種という意味になります。例えがディッキアではなく、更に今はHechtia lanataという名で記載されて(され直して)いますが、分かりやすいかと思いこちらを例として使いました。

ssp. = spの複数形
種小名 + ssp. + 亜種名
という表記になる事がほとんどのようです。
亜種は自生地でコロニーをなして集団で生息している場合、「既存種と異なる新種として登録するには差がなく、おそらく近縁なものであろう」といった場合に使う事が多いようです。

亜種の中で基準に指定されているものを基亜種といい、そちらは種小名を繰り返すそうです。コンスタンチノ氏のブログでDyckia delicata delicataや、fosteriana fosterianaというのを見たことありますが、上記のような意図でそう呼んでいるものと思われます。

var. = variant  変種  
変種とは、亜種と呼ぶには違いが小さいが、区別できる程度の違いがある場合を変種としているようです。また、分布範囲での差を重視しているようで、特定の狭い場所に生息する場合に使う事が多いようです。どれくらいの差だよ!と突っ込みたくなりますが、Dyckiaで var.が付く下の有名種で考えると基本種との差が感覚的に分かるかもしれません。

例_Dyckia marnier-lapostollei var. estevesii   
エステべシーと名付けられたマルラポの変種で基本種と少し異なるものという意味になります。基本種より鋸歯が長く、トリコームが荒いくらいの差ですが、現在はシノニム扱いとの情報あり。


form
変種の下のクラスで、分布域の変異などで変種というにはまではいかないが多少の差・特徴があるもの。wikipediaによると「自然(野生)状態で、形態などにおいてははっきりと区別できるものの、同じ地域の同種個体群とは生殖的に隔離されていない個体群を指す」とあります。

例_Dyckia marnier-lapostollei large form  基本種より俄然大きくなるm-lさん
  Dyckia goehringii white form  基本種よりあきらかに白いゴエさん


cf.  極めて近い類似種
例) Dyckia cf. hebdingii
ヘブディンギーに極めて近い新種
それってどれくらい近いの??って思っちゃいません?w 
「個体差でも変種でもなく、これは極めて近い類似種だ!」って同定できる人は、もはやディキ神様クラスですね。見てきている種の数が自分とは桁違いなのでしょう。


aff. =affinity 類似種(cf.の下のクラス)
例) Dyckia aff. argentea
argenteaに似てる種。こちらも上のcf.とどれくらいの差がある時に使用するのか自分にはよく分かりません。。


cv. = 園芸品種
下記の例のように「特定の親から選抜された」などcv.のあとに情報を加えることが多いです。園芸品種名を  '     '  で囲ってあればあえて付ける必要はないかと。。

例_Dyckia 'Bone' cv. of Brittle Star F3



type=タイプ標本 について
typeとは生物の新種を原記載するにあたって、その生物が新種であると定義する為の論文や判別文に添付する種を同定する基準となる標本の事を指します。ここで注意していただきたいのはタイプは永久保存される植物標本(ハーバリウム)だということです=植物の場合下の写真のように乾燥処置された押し葉(花)を台紙は貼って保存したものになります。
では巨木はどうするんだと思いますが、極端な話条件を満たせば葉一枚でもタイプ標本となり得るみたいです。ディッキアでは  type cloneという札で出回っているものがありますが、typeのcloneって.....なんかしっくりこないですよね? 現地で採取してから研究機関のある植物園などで同定に必要な花の形状など確認できるまで育てている間に増えたクローンということでしょうか?それとも他の意味があるのか? type formって札のdelicataも持っていますが、標本と同じような形をした基本種って事が言いたいのかな?とにかくディッキアは紛らわしいラベルが多くて困ります。ワシも真意を知りたいっす。


これを読んでご自宅にあるラベルを確認してみてください。私も人のことを言えませんが、、かなり適当に書かれた物が多くありませんか?皆が少し気を使って書くだけで徐々に正常化されるのでは?と思います。ブロメリア協会の先輩より有り難いご指摘いただいたので、こちらの記事は更に深く調べて徐々に編集していこうと思っております。
ちなみに参考にした書籍は昔買って流し読みしたL.H.ベイリー著「植物の名前のつけかた」。もう一回ちゃんと隅々まで読み直そう。。。汗 間違った解釈しているとこあったし。
長文最後までお読み頂きありがとうございます〜。

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