20170817

■ D.goehringii var. lemei 活着までの道のり ■


D.goehringii var. lemei(またはD.goehringii new form)と呼ばれるElton Leme氏が中央ブラジルで発見したといわれているゴエリンギーの変種。ゴエリンギーは原種なので採取地で多少の個体差があって当然な訳ですが、この個体は他にはない 白さ、葉にくっきりと刻まれた鋸歯の痕、そして鋸歯の先端が逆向き混じりというかなり特徴的なゴエリンギーです。初めて「Dyckia Brazil」で上の写真を見た日からいつかは欲しいと夢見ていたこの個体。

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2016年Q氏のガーデンを訪れた際に彼の持つ親株から細いストロンが伸びてきていたので「この子株が外せる大きさになったら絶対譲ってね!」と約束してから半年、ようやく手に入れたのが下の子株。届いて手にとった時、感動と緊張で手が震えました。

到着時の状態:2017年5月21日に届き10日間水に挿して発根を待ちましたが、うんともすんとも言わず。。そして長い間水に浸けとくのも不安になってくる。。

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2017年6月2日用土へ植えることに。ストロン部分だけで20cm以上あるので縦に植えるとなると相当大きい(深い)鉢が必要となり、そうなると用土の量も比例して無駄に多くなるので、それを避けるべく幅広の浅鉢に寝かして植える事にしました。*写真は日向土100%の状態のところに置いて撮影していますが、鉢底から半分以上をひゅうが土の層にして、その上に自分なりの発根用にブレンドした殺菌用土敷いてから覆土しました。

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2017年815日 2ヶ月経っても全く動きがないので掘り起こしてみると、根はまだ出てないません。そして埋まっていた部分を触ると若干ブヨブヨしてきている……。う〜ん。余計なことはしたくないが、この感触、腐っていたら緊急手術が必要だ。。ハウスに座り込みいろいろと考えました。短パンを穿いていたので両足で約20ヶ所は蚊に刺されていましたが集中して考えていたので全く気が付かず後になってあまりの痒さにびっくりしました。やはりこのまま放っておくのは心配で眠れなそうなので意を決して下から剥いて腐っていないか確かめる事に! 

茶色くなった下葉を剥いてみると、先端付近こそ若干怪しいものの真っ白で至って健康そうです。腐ってはいなかった!枯れた下葉が水分を吸ってブヨブヨした感触になっていただけでした。剥いてみると思いのほか芯(茎)の部分が細い!ここで一つ疑問が湧いてくる。ゴエリンギーのようなストロンが長いディッキアはそもそもどこから根はどこから来るんだ?通常の子株なら成長点真下の太いお尻部分が急所となるが、こいつは......??? まぁこの細い部分ではないことは確かだし、このむき出しの部分をそのまま植えるのはリスクが高いので切断するしかないな。

切断面はこんな感じ。理科の実験で見た「植物の茎」の断面図を思い出す。中心下に見える点は道管なのか?それとも根の断面なのか?冷静に考えるとディッキアの生体構造に関して解剖学的な知識が全くない。。経験で語ると、通常根は内部から伸びてきてお尻または茎の膜を破り外部に出て先端が著しく細胞分裂して伸びていくイメージ。だとすると、この長過ぎるストロンの内部で根が出口を探し迷子になっていたというか、馬鹿正直にストロンの先端まで伸びて向かっていた最中だったのか?それだったらやはり短く切って正解なのか?ゴエリンギーは植え替えの際に土中に埋まっていない枯れた下葉を毟ると、葉と茎の間にカピカピになった根が渦巻いていることがある。ということは、コアと思われる部分の近くまで植えた方がせっかく生えた根が外に出れずにカピカピになるリスクは低くなる。以前水挿しで発根待ちした際に水に浸かっていないかなり上の下葉の隙間から根が出てきた例を思い出した。参考写真 : 共に先端ではなく節の部分から横に、にょきっと出てきてますね。

ストロンを約半分カットして再度植え込み完了
いろいろ考えてやってみたものの、、腐っていなかったので多分掘り起こさず待っているのが一番良かったと思われます。でも鉢が小さくなったので管理がしやすくなったので良しとするか。
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2017年12月5日_なんとなく、ふっくらしてきたりカピカピに戻ったりを繰り返している。。根は出ているのか?冬なので恐ろしくて堀り起こせない。成長点近辺が開いてきているように見えるが、コレは慎重な見極めが必要。根が出て動き出す時は一番真ん中の成長点からです。なぜなら中心は動いていないのに周りの下葉が落ちて開いたように見える事があるし、暗すぎるところに置いていると根がなくても茎を伸ばして徒長するからです。SNSを見ていると、ベアルート時の徒長現象を動きがあった!活着した!と勘違いしてしまっている方がいますが、それで光に当てだすと痛い目に合うことが多々あります。

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2018年2月5日_状態に変化なし。若干痩せたか。。ハウスは晴れた日には、日中25度・夜間は暖房を入れ7度をキープの環境でしたが、この株は熱帯魚用のサーモヒーターで25度のお湯を作りお湯で腰水管理していました。

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2018年6月6日_気温は発根するのに申し分ないほど暖かくなってきている。しかし、発根している気配はない。カピカピや。。このあと写真を撮るのも可愛そうなほど痩せていきもうダメか。。。と諦めかけていました。しかし、もう待つことにも飽きたので、パイセンが実践していた、成長点にスポイトで活力剤やら稀薄した発根剤などを垂らす方法を試してみることに。

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2018年8月日_ん!!!!!!ふ、ふっくらしてきている!!!明らかに先週までと違う!!!!それは突然やってきました!発根して水を吸い上げ始めたようです!!(涙)1年以上痩せゆく一方だった個体がようやくですよ!感動しました。よく生きていたと。ここまでくれば安心ですが、まだ成長は始めていません。元々あった葉に水分が回り始めた状態なので真夏の直射日光は厳禁です。

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2018年8月20日_50%遮光から30%遮光ゾーンに引っ越し徐々に太陽光に慣らしています。そして新しい葉を展開し始めています!成長点がグリーンでフレッシュ、活発に細胞分裂している証拠。コレが見れれば安心です。しかし上で書いたようにあくまで中心の成長点がフレッシュな事が重要です。ベアルート時の徒長で下葉(茎)が徒長して見えてはいけない未熟な部分が出てフレッシュな色で見えている(茎が伸び首長状態になって)のは危険信号です。
成長と間違えやすい徒長の参考写真です。こちらは輸入の際3週間も地球のどこかを彷徨って我が家に届いた苗。梱包された真っ暗な箱の中に3週間も閉じ込めているとこれだけ徒長してしまいます。どう見ても通常の成長とは違い気持ち悪い姿なので、何かがおかしいと気がつくと思いますが。真っ暗な箱に閉じ込めて発根させる方法を推奨している方もいると聞いたので念の為。

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2018年9月28日_安定してきたので直射日光で管理している現在の写真です。あとはしっかり日に当てて成長してもらいます。ゴエリンギーは軌道に乗れば非常に成長が早い種なので、2年後にはカッコいい姿をお披露目出来るでしょう。

活着までの記録いかがでしたでしょうか?とても心臓に悪い(精神的にも)約一年半の長い旅でした。先生のおっしゃっていた言葉の深さが身にしみます。
「諦めたらそこで試合終了ですよ?」(安西)
諦めないで良かった!(諦めかけたけどw