20170912

■ 'Brittle Star' Blood ■



Dyckia  Brittle Star'  は 故 Bill Baker氏の最高傑作と呼ばれる D.dawsonii x ( D.fosteriana D.platyphyllaから生まれた交配種。BSI=Bromeliad Society International Bromeliad Cultivar Registerを見ると作出されたのは1998年と記載されています。FCBS=Florida Council of Bromeliad Societiesだと2001年となっていますが、どちらにせよこの世に誕生して約20年が経っているにもかかわらず、この色褪せないカッコ良さ!!原種同士の掛け合わせがメインで、今見ると地味な交配種ばかりであっただろう時代に このD. 'Brittle Star'がセンセーショナルだったことは容易に想像できます。

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Dyckia 'Brittle Star' (Photo from BCR)


こちらはBCR=Bromeliad Cultivar Registerに掲載されている登録写真。おそらくBryan Chan氏所有のもの、もしくは下のChanin氏の株の若かりし頃かと思われます。ディッキアは成長の過程で顔が変わるので、登録の写真はもっと沢山の写真を掲載して欲しいですね。



Dyckia 'Brittle Star'  (photo from SUCCULENTS)
出処が確かなものだと、こちらはBill Baker氏が生前一度だけインターネットオークションebayにオリジナルを出品し、タイのChanin氏が落札した株です。そしてChanin氏からこのBSを受け継いだのが、現在No. Dyckiaブリーダーと言われているタイのSueb氏です。しかし、現在は本当に☆になってしまったそうで、今年Sueb氏のガーデンを訪れましたが、ガチBSを見ることはできませんでした(涙)


こちらは「Dyckia Brazil」に掲載されているBill Baker氏の近い友人Steve Ball氏からConstantino氏に渡ったもの。Constantino氏はこの個体は一切子株を出さないと言っています。分頭した株を割る形でしか増えない品種は増やすにもリスクを伴うのでなかなか流通はしませんし、このクラスを所有していたら増やしたくない気持ちが出てきそうです。


自分の知っている限り、日本にも数人確かなものをお持ちの方がいらっしゃいます。実は自分も一つOriginal Cloneと呼ばれているものを持ってはいるのですが....自分のは眉唾ものなのであえてご紹介は控えておきます(笑)。D. 'Brittle Star' について、諸説(噂)いろいろ耳にすることがあり、何が真実なのかはっきりしていない部分があるのも事実です。。。自分が見た限り著名人が所有しているオリジナルクローンが、それぞれ違うように感じてしまったり(個人的感想です)、ナンバーが振られているものがあったり、BSIFCBSの写真もかなり違う。。。うーむ。Bakerさん亡き現在、確認することができないので、深くは突っ込むのはやめておきましょう。

余談ですが、4〜5年前 アメリカで Brittle Star TC(組織培養繁殖株)という名のものが出回りました。実は先に書いた自分の持っている Original Clone(?)を譲って頂いた方から'Brittle Star' TC も譲っていただいたのですが、、、、まずその両者の見た目が全然違うんですよ...どゆこと?(苦笑)同じ遺伝子から培養したクローンなら、ここは見た目が同じ(もしくは限りなく近く)でないとダメなところじゃないでしょうか?なんだかなぁ〜....と思い、TCの方は安価だったので そっとHybridと追記して、Dyckiaを育ててみたいというビギナーの友人にプレゼントしました(笑)きっと自分以外の購入者も自己判断で自分と同じような対応をしているのかな。。最近BS TCが売られているのを見かけなくなりました。

さて、実物はお目にかかることも難しいD.'Brittle Star'ですが、その血を引いたF3からの選抜種で格好良い園芸品種は多数あります。本家の容姿とは完全なる別物ですが、BSの次世代選抜種には白い物が多く存在し、白ディッキア好きの自分にはたまらないのが多いので気付くと沢山集まっていました。



D. 'Great White  
cv. of Brittle Star F3 (ex. Clone D013)
2015年頃初めて手に入れた株は発根させる事ができず ☆にしてしまいました。落ち込んでいたところ、九州のブロメリア兄貴が、所有している分頭した個体を割った際に分けてくれると連絡をくれました。優しい!あんた神かっ!? その前に購入先ナーセリーに「活着させれなかった...貴重な苗を譲ってもらったのに申し訳ない!(涙)」と伝えると、なんともう一株プレゼントしてくれたので再チャレンジできた次第でございます。優しすぎる!あんたも 神かっ!?しかしこの品種は非常に繊細で活着難の為、二回目のチャレンジ時も本当にカピカピの死の淵ギリギリまで発根せず、、、、、申し訳ない気持ちで諦めかけていました。もうダメかと思ってひたすら待った(放置した)結果、ある日ふと見ると、葉がふっくらしてきていて活着していました!!人々の優しさと奇跡的の復活劇、いろいろと思い入れの深い個体。ドラマのあった株は特別に愛情がわきますね。D.'Great White'の特徴はなんといってもその白さと、成長点で新葉の鋸歯が絡み合い、束になって生えてくる事です。大株になると成長点がドリルのようになります。しかし長い間絡まって閉じていると鋸歯の影響で葉先のトリコームが落ちたり、中に水が入り込むと葉が黄ばんでしまったりするので自分は早めに解くようにしています。


D. Bone  
cv. of Brittle Star F3
こちらのD.'Bone'は毎回同じところから花芽を出して、その極太花茎に押されて株がどんどん傾いていき、横から見ると中分け状態です(写真はそれが分からないような角度で撮影)。綺麗に作るのが難しい。。。こちらも一切子株を出さず、分頭した株を割って増やすしかないのでなかなか普及しません。現在では生まれ故郷のタイでも所有しているコレクターが非常に少なくなってしまったと聞きました。D.'Bone'もすごく繊細なんですよ。今年の春に植え替えしただけなのに、現在(9月)までずっと拗れてて、ピタっと成長を止め、葉色はベアルート株みたいな不健康そうな赤色のままです。根を痛めてしまったのかな。。繊細+分頭株を割ってしか増やせない品種はリスク2倍ですね。同じ理由でおそらくもうこの世に存在しないと思われる兄弟品種もいます。一度は見てみたかった D.'Bucksaw Ripper' 。もう作出者の手元にもなく、自分のしょぼいコネクションでは持っているというコレクターの噂すら聞いたことがありません。猛烈に欲しい交配種です。標本株のリンク貼っておきますね。http://registry.bsi.org/showImg.php?id=12173


D. 'Rolling Stone' 
cv. of Brittle Star F3 (ex. Clone D016)

これも思い入れのある株です。2016年秋にアメリカから我が家に来て、冬になるぎりぎりのところで発根しましたが、、、極寒の真冬に鉢をひっくり返してしまい、、波平さんのように一本だけ生えて頑張っていた根を痛めしまって、真冬にベアルート状態に逆戻りさせてしまいました。。見る度にカッピカピになっていき不安な夜を何度も過ごしましたが、翌春に無事活着してからは一気にここまで大きくなりました。ローリング・ストーンという名は伊達じゃなかった。隔世遺伝でしょうか、どこか D. 'Brittle Star' の父ちゃんD. dawsoniiを感じさせます。



D. 'Michael Andreas  
cv. of Brittle Star F3 (ex. Clone D001)

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同じF3でもこのような艶葉で赤い個体も出てくるのが交配の面白いところですね。白ばかりのグレックスシブリングの中に一つ艶葉がでたらこちらが特異な個体に見えてきそうです。繁殖力旺盛でとにかく子株を出しまくり増えまくるので、結構カッコいいのに扱いが雑な品種と言っても過言ではないかもしれません。(我が家でも5〜6頭に分頭して20近くは付いているであろう子株を外していない大株がハウスの隅にいます。。)写真は友人より拝借。



Brittle Star F3  Clone D006 (?)
このF3のグレックス シブリング一群は 、BS F3 Clone D *** というナンバーで管理されているものになります。持っているF3個体の中ではBoneに似ている個体。白くピンクがかった鋸歯が好みです。綺麗にロゼットを形成してくれないところも似ています。そしてD.'Great White'のような成長点。一年中ドリってます。このシリーズはドリルしてる部分を解かないと上の写真のように葉先のトリコームが落ちてしまったり黄ばみが出たりします。。

*この記事を書いたところ、知人が作出者からのDシリーズのナンバーリストを送ってくれました。とても有益な発見があり感謝です!よく見ると Clone D 006=D.'Bone'となっているんです。あれ?Boneは作出者からBS F3の種を譲ってもらったタイ人のコレクターがタイで実生して生まれたものなので連名で登録されていると聞いていたのですが。。


Brittle Star F3  Clone D033 

個人的にこのシリーズの中で好きな個体。深い赤葉にワックスのようなトリコームが乗ります。おそらくもっと良い環境だと鋸歯が尖くなるはず。頭から水を掛け成長点に水が溜まったまま放置したり、植替えで調子を崩すとすぐにトリコーム不全を起こす厄介者。タイのQさんもこちらのナンバーはよく交配に使っていますね。


Brittle Star F3 Clone D015


上のD015と似ていますが、Michael氏は「これが一番D.'Bucksaw Ripper' に近いと思う」と言っていました。写真は4号鉢サイズのまだまだ若い株ですが、大株にしたら化けそうなオーラを持っています。赤と白のカラーバランスが良く、非常に自分好みの個体です。


Brittle Star F3 Clone D007
上の写真は去年の姿。実はこの個体に一番ポテンシャルを感じていました。大きくならず葉の密度が増していき、鋸歯が逆向きで太め.......このまま締めて育てたら絶対カッコよくなるにと思っておりましたが、、、下を御覧ください
分頭していたのを割って植え替えたら普通に大きくなりました(笑)去年の姿はまだ未成熟で更に根詰まりしていただけでしたね(汗)これはこれで端正な草姿でカッコいい。葉数が増えたらもっと良くなると思います。



Brittle Star F3 Clone D042
これは地味ですね…うん…地味としか言うことがない。。先に紹介した個体達がグレックスシブリングの中では特徴のあるもので、半分以上はこんな感じのどこにでもありそうな個体なのでしょう。まだまだこのシリーズを持っているのですが、仕上がりがイマイチの為またいつかご紹介させていただきます。


Brittle Starからの選抜種達いかがでしたでしょうか?選抜漏れのグレックスの中にも格好良いものは結構いますよね!それを考えると自分で交配した実生株もどれが化けるのか、ある程度大きくしないと分からないってことですね。。今まで成長が著しく遅いものは淘汰していましたが、その中にもコンパクトに仕上がる個体など原石がいたに違いないですね。。。交配て奥が深い。