20181006

■成長過程での変化■

若かりし頃の友人(自分でもよいですが)を思い返して、あいつ小学生の頃運動神経抜群で、顔もカッコ良くモテモテだったのに高校入ってから全然イケてなかったなぁ…とか、幼馴染の女の子に成人式で再会したら誰だか分からないほど可愛くなっててドキッとした、みたいな経験ってありませんか? 歳を重ねて味のあるカッコいい親父になる方もいますし、人は「一番旬な時期」がそれぞれ異なると思います。また、本人は昔から変わっていないけど時代によって「イケてる」という枠に収まることもありますよね?いきなり何の話だよ!?と思うかもしれませんが、ディッキア含め、植物でもそういうのって多々あるなぁと、最近しみじみ思うのです。気に入っていたけど、大きくなってきたら大アジになってきて「思ってたんと全然ちがーう!」ってなる個体もいれば、地味だった個体がある時急に化けて一番のお気に入りになったり、そんなんを繰り返している気がします。ということで、今回は成長過程で変わるディッキアの顔についてのお話です。

_
_
園芸品種は基準となる株があるため、子株からゴールを目指して育てる感覚があります。しかし、名無しのハイブリッド(実生株)はある程度大きく育てないと どんな姿になるのか全く分かりません。当たりかハズレか、ある意味宝くじのような感覚。例えば 'Heaven & Hell' と’Bone'を交配した場合、同じ鞘に入っている種でも全く同じ個体というのは生まれません。色や鋸歯、葉の形状に少なからず違いが出ますし、この遺伝子からは想像もできない地味な個体も多数生まれてきます。その中から特徴的なものを選抜していって、最終的に過去に似たものがない個体が園芸品種となり得るわけですが、早々に選抜から漏れて淘汰された中にも大器晩成するタイプがいることは多々ありそうです。
_
_

D. ArizonaD. fosteriana

2018_2月 
こちらはタイのQさんのハイブリッドで、2016年に彼のガーデンを訪れた際「古いハイブリッドの選抜漏れコーナ」から買った中の一つです。購入時から4号鉢くらいのサイズだったのですが、この時まで一度もこの株の写真を撮った事がありませんでした=これといった特徴もなく、あえて写真を撮って記録したりSNSに載せたりするものではなかったという事です。それどころか去年のイベント出店時にこの株は2回売れ残り我が家に帰ってきている記録があります(笑)今思うと成長が著しく遅くあまり大きくならない個体だった故に気にもとめていなかったのだと思います。この時期初めて「えっ!?これ何だっけ?」と、この子に興味を持ち、認識しました。
2018_6
鋸歯が太くなり始めた時期。。この頃からところどころ、2つの鋸歯が合体して先割れしているように見えるほど、葉に対しての鋸歯サイズが太くなってきました。日本は長く寒い冬があるので、「冬に出した葉の鋸歯はしょぼいし、夏は必然的に大きくなる」と言ってしまったらそれまでなのですが、決してそれだけではない一段階レベルが上った感があります。はい。いきなりVIPの仲間入りです()日照時間の一番長いポジションに引っ越し、目が合うと「カッコいいですね〜君最高ですね〜」と話しかけこの個体の更なるモチベーションを引き出していました。
2018年_10月
一つ前の写真から4ヶ月(夏季)経っても大きさは然程変わらずです。8月に経20cmの鉢に植え替え、半月間遮光ゾーンにおり、更に最近は雨続きだったので色はすっかり緑になってきていますが、コンパクトなのに葉数が増えてきて、今が旬な感じですね。届いた時の姿からは想像もつかない立派な草姿です。ちなみに、もしこの交配種を園芸品種として登録申請するとしたら、この個体がこれ以上変化がないという大きさまで育てる必要があります。なぜならここからマイナスに変化する可能性は大いにありますので一番良い若い頃の写真だけでは、後にこの交配種が普及した際に混乱を招いてしまいます。40代の元アイドルが10代の頃の宣材写真を使い続けているに等しいことです(笑)ディッキアも人間でいう中高生くらいの時期は葉と鋸歯のバランスが詰まって見えカッコ良い個体が多いのです。大きくなってもそれをキープするのは栽培技術だけでなく遺伝子レベルで難しいことなのかもしれません。特に日本は冬があるので南国のように年中最高の環境で栽培できないし。
_
_
このようにディッキアの交配種はいつ化けるか分からないので自分のハイブリッド実生株はなるべく長い期間見守りたいのですが、、全てを大きくするにはそれ相応の栽培スペースが必要となってくるのでなかなかに難しいです。自分は置き場所の問題で今までかなり早い段階でハイブリッド実生株達を淘汰してきました。下の写真をご覧ください。

こちらは同じ交配の一群で、同じ日に播種したものになりますが、これだけ成長速度に違いが出ます。早すぎるのは百も承知ですが上の中で鋸歯が大きくディッキアと認識できる大きさに成長している個体は鉢上げして、著しく遅い個体は……さようならしておりました。しかし最初の例を見ると、どれがいつカッコよくなるかは分からないので、将来コンパクトにまとまる個体は全て☆にしてきてしまった可能性があります(涙)

もうひとつ例を
_
_

D. Wolf

こちらは最近の姿から。上の写真は今年の春に植え替えてから実験的に甘やかして育てている現在。夏季は20%遮光ゾーンに置き、培養土多めの保水性高い用土で栽培中。黒に近いボルドーの葉に白いトリコームが乗って上品な感じで「カッコいい」というより「綺麗」な印象です。いずれにせよゆるい環境にしてみたので予想通りな感じです。
同株の去年の姿。用土はかなりゴロゴロとした硬質系メインで、灌水頻度もかなり厳しく育てていた頃の写真です。先の例のように成長過程での顔つきの違いもあると思いますが、よく見ると下葉は現在のような鋸歯だったので、少なからず育て方が影響していることが分かります。根拠のない感覚的な経験談ですが、ディッキアは小灌水・栄養分のない用土で育てると鋸歯が長く(大きくではなく長く)なる傾向がある気がします。過去にも同じような事が結構ありました。鋸歯の長さへの影響は同じ親からのクローンで検証する必要がありますが、ディッキアは環境・育て方による草姿の違いはかなりあります。
_
_

D.marnier-lapostollei var. estevesii x D.’Bone'


ワタクシのハイブリッドです。上は2018年7月21日の写真。4号鉢。なかなかポテンシャル高そうじゃありませんか?D.’Bone’のような鋸歯にm-l var.estevesiiの粉っぽいトリコーム。この交配一群の中で明らかにこの個体だけ小さい頃からトリコームが濃かったんですよ。しかし先に書いた通り、このサイズはカッコよく見えがちで、大きくなるまでどうなるかは分かりません。


2018年9月16日
わずか2ヶ月で鋸歯が規則的に整列しだしました(逆向きなのは面白いですが)。なんか、Qさんのハイブリッドで既にありそうといえばありそうな雰囲気がバリバリ出てきてます(笑)ここからのさらなる変化に期待はしていますが、徐々に良くなっていくのではなく、一回「あれれ」という展開を挟むと若干萎えますね(笑)まあ、そんな簡単にカッコいいのが出てこないのは重々承知しておりますので引き続き見守ります。こうなってくると限られたスペースで、どの個体を信じ大きくするか、観察力とある意味ヒキ(運)の強さも必要となってくるのでしょう。


今の自分に必要なもの、信じる気持ち・忍耐力・大きいハウス。この3つが揃えば、BSIに登録できるような交配種を生み出せそうな気がしておりますが、現状どれも持ち合わせていないのでコツコツ頑張ります(笑)